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エキサイティングアウトドア(野生動物保護管理捕獲奮闘記)

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頂いたマタギ刀

師匠より頂いた静岡山間部のプロ猟師(マタギ)独特の手作り血抜き刀を早速忍ばせて山に入りました。
しかし雨、霧と最悪のコンディション…獲物の気配が分かりずらく、足音も聞こえないので忍びで穫るのは至難の技です。前回も霧のお陰で惜しい所で逃がしてしまいました…そんな話しを師匠に言うと、「何言ってんだ、これはこれでチャンスなんだ」と言います…なぜ?

「獲物を見つけにくい代わりに、獲物も人間を見つけにくいんだから雨や霧をいかに利用するかだよ」なるほど…自然環境を味方につけるマタギ独特の考え方というか・・・それ以前に天候を理由に仕事を休んでいたらプロとしてやっていけないのかもしれません。雨の日の鹿の習性や寝場の攻め方をレクチャーして頂き勝負!失敗・・勝負!失敗・・再び勝負!!木陰に2頭居るのを確認しました・・・此方を見ているので自分も隠れました・・・そっと木の隙間から覗くと霧交じりでも頭と背中が確認できました・・・そっと背中に狙いを付けて・・・

ど~ん!

 一頭がすっ飛んで逃げます・・・当たったのだろうか・・・近寄ると無事即倒していました!びしょびしょですが、お陰さまでなんとか一頭ゲット出来ました(ホッ)師匠もホッとしたようです(笑)

早速血抜きですが、これまた師匠が工夫した処理の仕方を試して見ました。
喉元から心臓を刺す通常の血抜きではなく、頸動脈を切るでもない処理の仕方です。恐る恐る教わった位置を確かめて差し込むと、細身の刃はスッと入りました・・・そこから刃を返してソッと抜きます。刺した穴は小さいのですが、そこからいきよい良く血が吹き出しました…これなら肉の痛みも少なく素早く血抜きが出来ます。叩いて鍛えられた刃は多少ひねっても刃こぼれ一つしない為、こんな芸当が出来るのです。細身の割に肉厚の刃の意味が解りました。師匠の師匠は血抜きの時の肉荒れを嫌って行き成り前処理に入ると言うことを聞き、自分も実践してきましたが、それだと肉質は最高ですが多頭撃ちに適していません。処理に時間が掛かってしまうからです。流石ですね…これなら直ぐに次の獲物を狙ったり処理したり出来ます。師匠がプロ猟師の撃ち子としてやってた時は、その内の半分以上を師匠一人で倒していたと言いますから、多頭撃ちをした時はいかに肉質を傷めずに血抜きをするかを考えて造ったのだと思いました。正にプロ猟師(マタギ)の為の刀でした。

しかし、動脈を狙って刃を打つのは位置関係を熟知してないといくら道具が合っても上手くいきません。どうやらそろそろ使えそうと判断したのでしょうか!?自分がクラブに入会した時に放血ぐらいは自信が有ったのですが真っ先に指導されました(笑)実際新人さんや鳥撃ちからの転向組みの方の9割以上が血抜きがしっかり出来ていません。全然基準が違うんです。鹿や猪の臭みは放血が完璧でないと出るのです。

今回は血抜き後の前処理まで頂いたマタギ刀で行いました。使ってみると肉厚な刃なのに予想外の切れ味でビックリしました。作業しやすい!腹膜を切るのがこんなに簡単とは・・・ちょっと刃を当てるだけで力を入れなくても簡単に切れます。お陰で雨の中ですが下処理がいとも簡単に完了しました。ただし、雨で錆が出始めていました。これが唯一の欠点ですね!ステンレスならこんな煩わしさは皆無です、しかし現在の猟の遣り方を考えるとベストな刃物です。大切にしたいと思います!

因みにプロ猟師のなかには頚動脈を切って放血する方も居て、一般の猟師が真似をしているのをよく耳にしますがコレは間違いです。プロ猟師は小口径の弾でヘッドショットするから効果的なのです。小口径の目的は肉荒れだけでなく、着弾の衝撃で心臓が止まるのを防ぐ為です。心臓が動いていていれば頚動脈を切っただけで放血が完了します。しかし、普通にショットやライフルで鹿を胴撃ちした場合は心臓が停止することが多く、頚動脈を切っても血抜きは完了しませんので注意が必要です。ですから自分が最初に教わった血抜きは喉元から差し込んで心臓を突く放血方法です。これだと大型のナイフや剣鉈を使えば経験が少なくても比較的簡単に出来るからです、しっかり心臓を突いたら傷口を下方に向けてより放血を進めましょう!
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一晩寝かしてから皮を剥いで前足を落としてみると・・雨で叩かれたにも関わらす水の進入もなく良好です!脂もべったりで最高の肉質でした。背ロースを撃ち抜いてしまった事を除けばですが・・・(泣)
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この肉はホントに美味かったです!よく鹿や猪は臭いと言う人がいますがそんなことは有りません。ちゃんと処理してあげれば癖の無さに驚くと思います。

今年は脂の乗った夏鹿を堪能できました。
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コレは鹿の角煮です。脂がサッパリとしていてプリプリしています。皆であっという間に平らげてしまいました。美味いですよ~

    終 わ り
by hidehoken | 2008-10-09 11:53